かばん修理工房の三谷でございます。
本日もたくさんのお問い合わせ、ご依頼いただきましてありがとうございます。
今回は千葉県T様からLouis Vuittonのメッセンジャーバッグの修理をご依頼いただきました。
ご依頼品はダミエ・グラフィットのダニエル。
ダミエは1888年に誕生したデザインで、実はモノグラムよりもその歴史は古いのです。
現在ダミエには3つのカラーバリエーションがありますが、その中の一つが、今回のダミエ・グラフィット。
2008年に、メンズラインとして登場したダミエ・グラフィットは定番のダミエの茶系色に比べてよりスタイリッシュな印象です。
シンプルなデザインのダニエルにダミエ・グラフィットのグレーのグラデーションのパターンが映えますね。
さて、それでは今回のご依頼品を拝見していきましょう。
今回のご依頼品は、ショルダーストラップに縫い付けられているループが千切れている状態です。
この部分は本体とストラップとを繋ぐ部分で、常に負荷がかかる為、比較的傷みやすい部分です。
今回は完全に千切れているループだけではなく、もう一方のループも同時に、新しい物に交換させていただくことに致しました。
作業の流れと致しましては、元のループから型を取り、革に写し裁断します。
その際に、破断に対する強度を高めるよう、合皮を革の内側に貼り補強致しました。
その後、新しく作成したループをストラップベルトに縫い付けていきます。
ここが今回の修理の一番のポイントでございます。
なぜこの作業がポイントなのかと申しますと、革のループの間に厚手の布ベルトを挟んでいるから綺麗に縫うのが困難だからなのです。
その理由は二つあります。
一つは、ループ部分の2枚の革をずれが出ないようにセッティングするのが難しいから。
通常は革を直接貼り合わせるのでぴったり合わせることができるのですが、今回の場合は間にベルトがある為、それが邪魔をしてループの革のずれが確認できないのです。
もう一つは、革の間に挟んだ布ベルトの繊維が邪魔をして針が垂直におりないことが多いから。
革を使用して修理する場合の多くは、革を1枚もしくは数枚重ねて縫い合わせます。
この場合は、ミシンをかける際にまっすぐに針を降ろしていくと、素直に針が垂直に刺さり何枚か革を重ねていても概ねイメージ通りに縫う事ができます。
しかしながら、今回のように革の間に布ベルトをかませている状態ですと、いくら気を付けて縫っていっても垂直に針が刺さらない事が多いのです。
その為、このようなケースは裏側の革を縫い外してしまったり、縫い目がいびつになってしまう事がございます。
ですから、今回も出来る限りの注意を払って作業をさせていただきました。
修理完了後の状態はこちらです↓↓↓↓
革はオリジナル品にかなり近い物がご用意できましたので、修理箇所が自然に馴染んでいます。
気がかりだったループ裏側の縫い目も大きくずれることなく仕上がりました。
お鞄の状態も良好でしたので、これからも末永くご愛用いただけることと思います。
T様、今回はご依頼いただきまして誠に有難うございました。
【お客様の声】
バック、手元に届きました。
ありがとうございました。