名古屋市のO様からシャネルのショルダーバッグの修理をご依頼いただきました。
1910年、パリの帽子店から始まったシャネル。
シンプルでいて斬新な発想から生まれる彼女のアイテムは、第二次世界大戦が勃発するまでの30年間、次から次へと発表され続けとどまる所を知りませんでした。
「黒は喪服」というのが常識だった時代に「リトルブラックドレス」を発表、ベージュの靴につま先だけ黒の革を使用した「バイカラーシューズ」、そして1929年には、まだハンドバッグしかなかった時代に両手が自由に使えるようにとショルダーバッグを作り出します。
それが、今回のご依頼品であるシャネルのアイコンバッグ、マトラッセです。
キルティング模様のレザーに、革が編みこまれたチェーンストラップ、そして存在感のあるココマーク。
ショルダーバッグの原点であるマトラッセは今尚、色褪せることなく世の女性たちに愛されています。
一度見たら忘れられない程のインパクトがあるのに様々なスタイリングを楽しめる女性が憧れるバッグですよね。
さて、前置きが長くなりましたが、今回はこちらのバッグのストラップの革の交換修理をさせていただきました。
お鞄を拝見させていただきますと、チェーンストラップに巻き付けてある革が千切れている状態。
革は油分が抜けてしまいますと、弾力を失い、損傷を受けやすくなります。
さらに革の硬化が進行いたしますと、今回のご依頼品のように千切れてしまうようになります。
チェーンに通してある革が、金具と接触することによりバラバラと千切れてきている状態でした。
そこで、今回はチェーンに編み込んである革紐を全て取り外し、新しい革紐に交換させていただくことに致しました。
革はチェーンの僅かな隙間に通す為に、薄い革を使用します。
革は細く裁断した後、両端から中央に折り畳み接着させて紐状にします。
これをオリジナル品と同様の方法でチェーンの間に編み込んでいき、革の端が解けてこないよう処理をして仕上げます。
今回のご依頼品のようなストラップは、使用されている革によっても異なりますが、千切れるだけではなくチェーンとの摩擦で革の表面が剥げたり毛羽立ちが起きやすい状態にあります。
革を新しい物に交換してあげるだけでも、印象がぐっと若返りますので、気になっている方は一度ご相談くださいませ。
修理完了後の状態はこちらです↓↓↓↓
チェーンのしなやかな動きを妨げることのないよう革を程よく引き締めて編み込んであります。
ストラップのダメージによる煩わしさから解放されて快適にご使用いただける事と思います。
素敵なバッグを、この先も末長くご愛用いただけますことを願っております。
O様、この度はご依頼いただきまして誠に有り難うございました。