今回は山口県下関市のY様からChloeのショルダーバッグのループ修理のご依頼を頂きました。
クロエは1952年、フランス・パリでギャビー・アギヨンが始めたラグジュアリーブランド。
今でこそ当たり前の「既製服」を世界で初めて提案し世に広めたブランドとしても知られています。
そんなクロエの作るバッグは厚みのあるしっとりとした革を使用した重い印象が特徴。
ブランドマークや型押しに頼らない計算されつくしたデザイン性の高さも魅力です。
クロエはスタイリッシュな大人の女性にぴったりのバッグですよね。
さて、今回はクロエ・エデンのショルダーバッグのループが千切れているとの事で修理のご依頼を頂きました。
確認させていただきましたところ、片方のループがミシン目から千切れかかっておりました。そこで、出来るだけ似たような革を使用し、新しくループを作成させていただくことに致しました。
使用する革は近い色のものがご用意できましたので、
こちらの革を使用させていただきました。
当ブログでもお馴染みのループ修理ですが、その中でも特に簡単そうに見えるこちらのループ修理。
一見しますと、Louis Vuittonのループよりも簡単に修理ができそうにも見えます。
ところが、実はこの手のループはとにかく縫いづらいのです。
ループが取り付けられている部分を良くご覧ください。
表面の革、ループ、そして「ファスナーが取り付けられている革」の3枚が重ねて縫製されています。
お鞄を製造する際には、順序良く組み立てながら縫っていきますので、ここは特に問題になりません。
しかしながら、修理をする際には非常に厄介です。
修理では完成形の状態に組み立てた後、ミシンで縫う必要がございます。
その際、綺麗にループを仕上げるためには二つのポイントがございます。
一つはファスナーが取り付けられている革を、手で奥に押し込んだ状態のまま縫うという点。
かなり強く押し込みながら縫っていかないと、以前のミシン目が露出してしまうのです。
そして二つ目は、ファスナーをしっかりと閉じた状態で縫うという点。
ファスナーのエレメントをきちんと閉じていないと、完成形もファスナーが開いたままの状態に縫い上がってしまうのです。
修理では、八方(はっぽう)ミシンと呼ばれる特殊ミシンを使用します。
家庭用のミシンは補助テーブルを外すとフリーアームができますが、そのフリーアームをすごく細くしたような形状をしております。
立体的な物を縫製する際には欠かせない八方ミシンですが、これも万能ではございません。
本来、ファスナーは閉じて縫うべきなのですが、こちらの修理では、ファスナーの口を開けないとミシンが入りません。
その為、ミシンのアームがバッグに引っ掛かって思い通りに縫うのが非常に難しいのです。
そして何とか縫い上げてみると、以前のミシン目が見えてしまっているといったことがよく起こります。
最終的には、数をこなしていくことで難なく仕上げられるようになりますが、明確なコツがないという点では他のループ修理よりも難しいのではないかなと思います。
こちらが修理完了後の状態です。
ファスナーの部分は綺麗にまとまっており、修理箇所は目立ちません。
今回は幸いにもご依頼品にすごく近い質感のワインレッドの革をご用意できましたので、とても自然に仕上げることができました。
ぜひ末永くご愛用いただけます事を願っております。
Y様、この度はご依頼いただきまして誠にありがとうございました。